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ウェブデザインって何ですか
琳派とデザイン
ウェブデザインといいますが、デザインって何でしょうか。ちょっと安易に使われていませんか。(デザインを3、4点作ってくれ、その中から気に入ったものを選ぶから……? あんたのデザインテイストを教えてくれ……?)
必要なものは全てある。余計なものは何もない。これがデザインの要諦です。なぜならデザインは機能だからです。アートとか装飾じゃないんだから、デザインに得意分野やテイストなんかありません。デザイナー(コピーライターも)は、あくまで黒子に徹しなければなりません。自分の個性を出してはいけないのです。
デザインはバウハウスから派生したものです。つまり建築と関連したものが始まりで、視覚的構造設計といえます。
アイ・ウェブデザインは建築や3Dは手掛けていないので、デザインをスーパーフラット(※)で捉えています。平面での視覚構造はレイアウトです。
日本の文化で考えると、建築に関連した平面デザインは屏風絵や襖絵になります。屏風絵・襖絵を絵画ではなく、デザインから見るとどうなるでしょう。尾形光琳は、きわめてデザイン性の高い作品を残しています。たとえば《燕子花図屏風》には、真ん中辺りに花のない株が、ひとつ描かれています。
ポイントはこの株にあります。真ん中の株に花が咲いていたら価値はありません。すべて同一の株の連続では、紋様であってデザインにはなりません(実際、型染めの技法を用いているようですね)。
六曲一双の屏風で、全体として連続した図柄です。この真ん中の株でデザインが完結しています。
同じ光琳の《風神雷神図屏風》は左右に風神と雷神が描かれていて、真ん中は空白(金箔地)です。
俵屋宗達の模写と言われますが、構図は変えてあります。宗達(グレー)と光琳(赤)の風神の輪郭を重ねて見ると、ほぼ一致します。模写というより、トレスしたということになります。
現在なら、著作権云々といった騒ぎになるところです。しかし、これは剽窃ではなく。先人へのオマージュでもありません。
架空のものを表現するには、決まった様式があります。様式に則らなければ、見る人に納得してもらえません。
絵師たちは、別に自己表現を目指しているわけではないので、オリジナリティーはさほど重要ではありません。クライアントの求めに応じたベストなデザインを模索した結果です。
この作品は二曲一双で、かなり太めの屏風の枠が中央を縦に通っていることで成立しています。宗達の作品に比べて、絵柄が下よりになっているのはそのためです。枠を取り去って右隻左隻を並べては、中央と周囲の空白は只の隙間になってしまいます。(多くの図版解説がこの愚をおかしています)
光琳は当然そのことを計算しているはずです。デザインは構造ですから、最終的な形を考えて作ります。絵だけ描いて後は経師屋さんにおまかせ、なんてことはありません。枠がなければ建具ではありません。額縁とは違うのです。
※宗達の作品は、右隻左隻を離して置くべきだという見解の方もいらっしゃるようです。たしかに宗達は空間を表現しているようにも見えます。この場合はむしろ屏風の枠を、ないものとして見るのかもしれません。
右の画像をご覧ください。江戸琳派後期の鈴木守一(秋草図)です。一見普通の掛け軸のようですが、実は表装に見える上の風帯部分、中廻しの裂の部分もすべて描いたもので、全体が絵なのです。
大胆な構図のための工夫ですが、表装された完成品が商品であることを自覚しているからこその発想です。
これは単なる思いつきや、奇をてらったものではありません。江戸の絵師(デザイナー)たちが、作品(商品)の置かれる場所(ほの暗い奥座敷?)を前提に制作していることが伺われるよい例です。
琳派とはだいぶ外れますが、TV番組で《洛中洛外図屏風》は右隻左隻を並べたのではなく、自分の前後あるいは左右に置いて眺めたのではないか、という仮説を紹介していました。つまりパノラマですね。
大変面白い説で、鳥瞰図なのも納得できますし、大いにその可能性はあると思います。
デザインには必ず目的があり、主役はクライアントです。別な言い方をすれば、デザインは自立できないもので、常にアノニマスでなければならないのです。作家性は不要です。
屏風・掛け軸に限らず、平面デザインはレイアウトが重要な要素になります。紙メディアではレイアウトができます。しかしウェブデザインでは事実上不可能であるといえます(CSSはブラウザーで見え方が変わりますので、レイアウトには使えません。しかも同じブラウザーでもバージョンによって違う!)
ウェブデザインの構造とはナビゲーションデザインのことです。ユーザビリティーとアクセシビリティーを考慮したデザイン、言い換えればマーケティングから発想するデザインです。アートでも装飾でもありません。目的のある工芸品なのです。
尾形光琳の作品がデザイン性に優れているのは、このマーケティング(商品としての最終形態)から発想しているためです。型染めの手法を用いたり、金箔の代わりに金泥を使う(やはり金箔だとの説もありますが、経費を節約したのではないでしょうか)ことなども、その線上にあります。絵の技量の問題ではないのです。
お分かりでしょうか。クライアントからのオリエンテーションがない状態で、デザインなどできないのです。同じ理由で、他のクライアントへのデザインは貴社の参考にはなりません。(当所が制作事例の具体例を掲載しない一つの理由でもあります)
デザイナーのテイストではなく、クライアントのテイストを表現するのがデザインなのです。
※スーパーフラットは村上隆氏が言い初めた言葉です。村上氏が日本画科出身であることを考えれば納得できます。
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